
- メルカリで確定申告して税務署が来る調査に来ることってあるの?
- 税務調査は何を見るの?
- 税務調査にくる理由は?対策はどうしたらいい?
確定申告はしているけど、税務調査が来るかも、と思うと不安ですよね。
インターネット取引では、申告漏れが多く追徴課税額も多額のため、国税庁は、積極的に調査することを公表しています。

とはいえ、何を気をつければいいか?どう対処するのか?なんてわからないですよね。
そこでこの記事では、
この記事の内容
- メルカリの税務調査でみられる項目
- 税務調査がくる理由
- 税務調査の対策
について、実際の税務調査の事例をもとに解説しました。

私の税理士事務所勤務時代の実際の事例です。
これから、メルカリの確定申告をする人には必見の内容です。ぜひ最後までご一読ください。
税務調査の経緯

これは、私の前職、税理士事務所勤務時代の話です。税務調査の立ち会いから関与したクライアントがいました。
個人でメルカリで古着のアパレルをやっているシングルマザーの人でした。ある程度売り上げも伸びてきていて、青色申告を自分でやっていたけど、税務調査が来ることになり、立ち会ってくれる税理士を探していたところ、飲食店経営の知人に相談したのがきっかけです。この飲食店経営者が私の勤務先のクライアントでした。
Mさんの確定申告の状況は以下のとおりです。
Mさんの概要
- メルカリで副業時代含め5年間運営
- おもに中古の洋服の販売(仕入は業者が中心)
- 消費税課税事業者
- 課税所得が前年で450万円
- 確定申告は青色申告で自分で申告
では、次章よりメルカリでの税務調査で一般的に見られる項目や、Mさんの税務調査でのポイントなどを解説します。
税務調査でみられる項目

税務調査は概ね3年分(法人だと3期分)を見るのが一般的です。
帳簿の各勘定科目の数字と原資資料の数字が一致するかを確認しています。
原資資料というのは、請求書、領収書、明細書など取引先などが発行した帳票類のことです。納税者側では加工できない書類なので、原資資料と帳簿の照合で仮装隠蔽がないか確認するわけです。
本質的には、税務調査は儲けをどうゴマかしているか?を見ていて、売上と仕入・経費にお金の裏付けがあるかをつぶさに確認します。
ポイント
売上や仕入・経費の税務調査でポイントとなるのは以下の4つです。
- 売上の計上
- 仕入れの計上・棚卸し
- 外注費・人件費
- 経費の判定
売上の計上
売上の計上から入金の過程でのポイントは、商品は売却済なのに、まだ入金がされていないものが要注意です。
メルカリで売れた商品は一旦、メルペイ残高になります。その後銀行口座への振替処理をして現金化されます。
つまり、メルペイ残高になっているものが売上に計上されているのか?がポイントです。
入金されたものを売上と認識する人がいますが、税務会計上は、商品を相手が受け取った時点で売上計上することになります。
仕入れの計上
業者から商品を仕入れている場合はその請求書、ネットで仕入れている場合は請求の明細、実店舗で仕入れる場合はレシートと帳簿の仕入れの金額が確認されます。よくあるミスでクレジットカードの明細をとっておけば大丈夫と思われがちですが、クレジットカードの明細のみでは帳票としては要件を満たしません。
ポイント
仕入れや経費では、帳票に日付、金額、相手先、支払内容の4つが明記されている必要があります。
クレジットカードの明細には支払内容がないため、必ず請求書やレシートを保管しましょう。
外注費・人件費
発送業務の外注で代行業者に依頼する場合には、代行業者からの請求書と帳簿の外注費の金額が一致するか確認されます。
外注費で特に注意が必要なのは、業者が個人名の場合です。
個人が相手の場合、税務署はキックバックではないか?と疑うので、事細かに説明を要求されることもあります。
また人件費は架空人件費を疑うので、実際にアルバイトなどを雇った場合は、勤務実績が残るように勤務表などの帳票はかならず保管しておきましょう。
棚卸し
せどりなどの物販の場合は、棚卸しも必ずチェックされる項目です。棚卸しは期末に売れ残った在庫を仕入れから棚卸資産に正しく計上されているかを見ます。
棚卸しの金額が少なければ、
売れ残りが仕入れに含まれている=仕入れの金額が多い
となるので、支払う税金は少なくなります。つまり棚卸しの計上が少なくないか?を見ています。
経費の判定
税務調査で、どんな業種も必ずチェックされるのが経費が必要なものかどうか?です。
- プライベートのものが混入していないか?
- 経費とならない税金(所得税や住民税)を経費にしていないか?
は必ずチェックされます。
税務調査の否認項目

今回の調査で否認された項目は何だったのか?具体的に示すと、以下3点でした。
- 売上の期ズレ
- 棚卸し漏れ
- 過大経費
悪質といえるような否認項目はなく、指摘を受けたのは税務調査では、一般的な内容のものだけでした。
売上の期ズレ
「売上の期ズレ」というのは、売上の計上の時期がズレているので、「期ズレ」と呼んでいる業界用語です。
例えば、令和3年の12月25日に売り上げた商品は送り先に到達していて、メルペイから口座に振り替えたのが令和4年1月5日だったとします。
1月5日に口座に入金されたので、令和4年の1月の帳簿に計上していますが、本来は入金ではなく発生で考えるべきなので、令和3年12月の売上にすべきです。
このように計上時期がズレているのを期ズレといって、この調査でも指摘を受けました。
棚卸し漏れ
棚卸し漏れの指摘もありました。
手元にある在庫は正しく計上されていたのですが、業者からの仕入れで届いていない分が未計上でした。
この事例の方は、中古服の販売で、業者から1箱いくらで中古服を仕入れています。12月下旬に発注をしていたのですが、年末年始のため、年明けに商品は届きました。
棚卸しをするのが12月末ですので、手元の在庫を数える時には無いため数え漏れがおきたんですね。
こういったケースは、税務調査の実務上よくあることで、業界的にはトラック在庫と呼んだりします。手元に未着で輸送のトラックに積載されている状態を指してそう呼びます。

過大経費
経費の中に経費ではないものが含まれていて、その指摘を受けました。具体的には所得税・住民税の支払いが租税公課に、国民健康保険料が保険料の中に計上されていました。
総評
けっきょく追徴税額がいくらになったかというと、細かい内訳は守秘義務があるので伏せますが、増差所得が約200万円でした。
増差所得
増差所得というのは、売上の漏れで収益が増えたり、経費の計上を否認されて費用が減ったりすることで所得が増えた金額のことを言います。
所得が増えた分、税金が増えるので、増差所得の分、追徴税額が増えることになります。
この増差所得200万円で追徴税額がいくらになったかというと、
所得税 | 約40万円 |
消費税(売上計上漏れ等課税対象のもの) | 約12万円 |
過少申告加算税 | 約 4万円 |
住民税 | 約20万円 |
事業税 | 約 8万円 |
合計 | 約84万円 |
となりました。
この他、後に延滞税が別途計算されたうえで送付されてきます。また、所得が増えるので国民健康保険料も増えることになります。
税務調査の理由

そもそも、なぜ税務調査に来たのか?が気になりますよね。この理由については調査官によって答えてくれる人と答えてくれない人といます。
今回はたまたま答えてもらったのですが、具体的に指摘したわけではなく話の内容で読み取るところ、どうも理由は以下のようでした。
- 現金残がマイナス
- 売掛金がない
- 事業主勘定の金額が少ない
- 税理士の署名押印がない
この4つがなぜ税務調査を引き寄せたのか?調査官の話ぶりと私の推測からポイントをまとめました。
現金残がマイナス
現金残がマイナスということは現実にはあり得ないので、明らかに帳簿のまちがいです。でも、じつは真面目に記帳していても簿記の知識がないとマイナスになることがけっこうあります。
ところが、調査官はよくあるまちがいとは見てくれずに「現金がマイナス」ということは現金が少ない、
つまり、
- 経費でない物を経費に計上して現金で処理した
- 売上があるのに計上していない
といったことを疑って見ています。
この意図的な操作が反映されての現金残がマイナスというところに着目されたのは否めません。
売掛金がない
じつは、この調査の対象になった確定申告書の青色申告決算書にある売掛金は残高が0でした。つまり、売掛金は計上してなかったのです。
本人はいたって真面目に記帳しているのですが、入金ベースで売上を計上していました。つまり、預金口座振替時に売上を計上していたのです。
これはもう、売上の計上漏れが一目瞭然になってしまいます。
事業主勘定の金額が少ない
売掛金と同じように事業主勘定の金額がかなり少ないのも論点でした。
事業主勘定ってそもそも何?という方のために簡単に言うと、事業とは関係ない取引を集約する科目です。
個人事業を営むと、預金口座を個人のものを使う関係上、事業のものとプライベートのものが混在しがちです。
事業の入出金がある口座で、個人の生命保険の引き落としや、経費にならない所得税・住民税の支払い、毎月の生活費を引き出すといった取引が混在してきます。
ところが、この金額が少ないと、経費にならない支出を事業の経費にしていることが疑われます。
実際、今回の調査でも事業主勘定の金額が少なく、租税公課に所得税・住民税が経費計上されていることが判明しました。
税理士の署名押印がない
税理士に確定申告を依頼すると、申告書に署名押印(電子申告の場合、電子署名)がされます。
税理士の署名押印があると税務調査に来ないわけではありません。
ただ税務署では調査に行く際には、調査先を選定します。国税庁にはKSKというシステムがあって、業種ごとの利益率などのデータ管理をしています。その中で前期と著しく数字が変動したり、粗利率や利益率が同業種と著しくかけ離れていると調査対象先になります。
調査は限られた人数の中でやるため、調査先にも優先順位があります。調査官に聞いたところによると、税理士がつくっていない申告書は初歩的なミスが多いという認識はあるそうです。
初歩的ミスが多いと増差所得は増えるので、その分追徴税額が増えます。

調査官も成績が人事考課に影響するので、増差所得や追徴税額は多い方が査定は良くなります。
税務調査の対策

税務調査はできれば避けたいところですよね。ただ、ある程度、所得が大きくなると避けては通れないです。そこで対策としては、初歩的ミスを防止するのが大前提です。初歩的なミスが多いと、調査先に選定される確率も上がり、調査が実施されれば追徴税額も多くなります。
避けるべき初歩的ミスのポイントは、
- 棚卸しをきちんと計上する
- 売掛金計上する
- 現金がマイナス残高になっていないかチェックする
- 事業主勘定の金額が少なすぎないかチェックする
3と4については簿記の要素があるので自信がなければ税理士に依頼するのも考えましょう。
税理士に依頼する

申告書の作成に自信がない場合や、ある程度実績が出ていれば税理士に依頼するのも一考です。
税理士に依頼するにもメリット・デメリットがあります。それぞれまとめました。
税理士に依頼するメリット
まずは税理士に依頼するメリットからです。
- 初歩的ミスがない正しい申告書がつくれる
- 税理士の署名押印があるので税務署に対してのアピールになる
- 確定申告の作業時間が空くのでその分事業に使える
- 税務調査に立ち会ってもらえる
- 税務署からの問い合わせ窓口になってもらえる
税理士に依頼するデメリット
次に税理士に依頼する場合のデメリットです。
- 税理士費用がかかる
- 税理士と相性が合わないとストレスになる
税理士費用はかかりますが、税理士費用の相場を知って、選び方を知れば、税理士に依頼するメリットは大きいです。
メルカリなどせどりでおすすめする税理士の選び方や相場についてはこちらの記事で解説しています。
せどりの税理士の選び方、おすすめの税理士や費用の相場を解説
まとめ
国税庁ではインターネット取引に着目しています。今後もメルカリをはじめとするせどりに税務調査が頻繁に実施されるのは十分予想できます。
まずは、申告書を作成する際に以下の点はチェックしましょう。
- 棚卸しをきちんと計上する
- 売掛金計上する
- 現金がマイナス残高になっていないかチェックする
- 事業主勘定の金額が少なすぎないかチェックする
自信がない場合やある程度実績が出ている人は税理士に依頼するのも検討しましょう。
確定申告のやり方についてはこちらの記事で解説しています。
メルカリの確定申告のやり方