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Le Style PEUGEOT

Vol.5 知性で操り感性で味わう、MTの楽しさ

ATがクルマのトランスミッションの事実上の標準となるなか、
複数のMT車をラインナップするプジョー。
なぜプジョーはMT車を用意するのか?
そしてその魅力は、どこにあるのか?
レーシングドライバー、松田秀士氏が語る。

クラッチが、運転を面白くする

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MTとATの最大の違い、それは「自分の意志を、運転に込めることができるのかどうか」ということです。MTもATも、その本質は「変速機」であり、走るためのギアを選ぶという機構です。しかしMTにはATにない特質があります。それはクラッチの存在です。つまり、エンジンのパワーをタイヤに伝えるかどうか、自分の意志で選択できるということなのです。

ATが「どのギアを選ぶか」という選択肢しかないのに対し、MTはクラッチを使うことで「駆動力を伝える」「伝えない」も選ぶことができます。またクラッチをつなぐときに「スパッとつなぐ」「ゆっくりつなぐ」という操作も可能ですし、2速から4速、5速から3速というように、ギアを飛ばして変速することもできるのです。

こうした「工夫の余地」があることで、MTはクルマの運転の楽しさをより深めてくれます。より速く、よりスムーズに走るにはどうするか。どう操れば、このクルマという機械が自分の思い通りに動いてくれるか。これは一種、クルマとの知的な対話であり、その奥を深く探るにはドライバーの知性が必要となってきます。つまり「MTは頭脳で運転するもの」なのです。

もちろん、現在のATは長足の進化を遂げています。サブゲートやパドルでマニュアル式のシフトチェンジができるATもごく当たり前になっていますし、ツインクラッチを持ち、瞬時にギアチェンジできるATもあります。「変速する」という部分だけを切り取れば、MTを上回る性能を持っていると言ってもいいでしょう。しかし、クラッチを使い、より運転の楽しみを味わうという部分では、MTにはかなわないのです。

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ATは電子レンジ、MTは手料理

別の話にたとえてみましょう。現代の電子レンジは、プリセットされたメニューを選ぶことで「煮込み何分、オーブン何分」といった複雑な工程もこなしてくれます。これがAT。一方、MTは、昔ながらの鍋やフライパンを使った料理です。確かに手間はかかりますが、料理の過程で「もう少し煮込んだほうがよさそうだ」とか、「焼きはこの程度で」といった工夫ができます。また「もうひと味、この調味料を加えてみてはどうだろう?」といった発想も出てきます。料理ができあがるという結果は同じですが、どっちが楽しいでしょうか?

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「食べられればいいや」という人は、手間のかからない電子レンジでの調理を選ぶでしょう。でも「料理を楽しむ」ということを考えれば、やっぱり手料理だと思います。つまり、ドライブという行為の目的が「目的地に着けばいい」というのであればAT。「ドライブそのものも楽しみたい」というのであれば、MTってわけです。さらにもうひと言。電子レンジと手料理、長く続けるとどっちが料理の腕が上達するでしょうか? 言うまでもなく、手料理ですね。つまりMTは、運転そのものも上達させてくれるというわけです。

"ゆるやかさ"がプジョーMTの魅力

では、プジョーのMTはどんな個性を持っているのでしょう? 僕の感覚では「ちょうどいい"間"を教えてくれるMT」です。人と人との対話には「間」が重要なファクターとなります。話し上手な人は、間のとり方も上手です。さきほど「MTの運転はクルマとの知的な対話だ」と言いましたが、じつはこの対話にも、間が必要になってくるのです。プジョーのMTは、運転を通して、どれくらいの間、つまり操作のスピードやタイミングを教えてくれるというわけです。

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プジョーのMTは、クラッチは適度な重さで、シフトもスルリと入る感触です。そしてどちらもある程度のストロークがある。つまり、幅があるんです。こうした性格付けにより、いまのシフトが巧かったかどうか、クルマが教えてくれます。ギアがスパッと入って回転が合うと、気持ちいい加速が味わえる。でもタイミングがちょっとズレると、クルマがギクシャクする。とくにMTの初心者は、しばらくそうした違和感をおぼえるでしょう。でも、コーナーをいくつもこなしていくうちに"どうやればいいか"がわかってくるはずです。巧くギアチェンジできたときの快感が味わえるまで、それほどの時間は必要ありません。

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こうした"ゆるやかさ"は、プジョーのクルマづくりの哲学とも言える部分でしょう。単にギアのストロークやクラッチの踏みしろだけじゃない。粘りのあるエンジン、ゆるりとロールするサスペンション特性、適度な重さでリニアに回頭するパワーステアリングの味付け。どれも「自分の操作が、クルマをどう動かすか」をわかりやすい形で表現して、運転の楽しさへと導いてくれるのです。

感覚とシンクロする楽しさ

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また、207GTiを例にとると、エンジンのしつけ方もMT向きです。じつはMTって、エンジンがアクセルレスポンスに敏感すぎると、神経を使う部分が多くなって、楽しくないんです。でも207GTiのエンジンは、そのあたりをうまく味付けしてある。吹け上がりは軽いのに、低回転域ではアクセルワークに過敏ではなく、2000回転くらいからトルクをしっかり出す特性になっている。そして4000回転を越えたあたりから別のエンジンのようにシャープにトルクとパワーが立ち上がる。つまり、日常域の回転数では運転のしやすさを、スポーツドライビングに切り替えたらドライバーが求めるパワーを出す、その両面がよくできているんですね。

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しかもアクセル開度に応じた回転数の上がり方、アクセルオフ時の回転の下がり方が、とても感覚にリニアです。そのため、2速から3速、3速から4速というシフトアップが、同じタイミングでできる。シフトダウン時にヒール・アンド・トゥをつかって回転を合わせるときも、自分の感覚と違和感がない。こうした感覚にリニアな部分は、本来、スポーツカー、場合によってはレーシングカーが持っている資質です。なぜなら、そうしたカテゴリーのクルマは、感覚を生かして走らなければ速くは走れませんから。

でもプジョーは、カリカリのスポーツカーよりも実用車に近いのに、そうした資質を持っている。これが「走りの楽しさ」につながることは言うまでもありません。プジョーではじめてMTに出会った人でも、走りの楽しさを深く味わっていくことで、MTの操作、さらにはクルマそのものの運転がどんどん上手くなるはずです。

己の全てで、クルマを操る

MTのメリットはほかにもあります。まず、MTはエコであるという部分も、忘れてはならないポイントです。かつてのようなMTとATの価格差はなくなってきました。しかしそれはATの構造が簡単になって安く作れるようになったからではなく、量産しているかしていなかという違いで、構造そのものの単純さはMTに軍配が上がります。つまり、クルマを作る過程での作業量、必要なエネルギーも考えたら、MTのほうがはるかにエコです。またMTでクルマと、エンジンと対話しながら走ることで、エコな運転を身につけることもできますから。

繰り返しになりますが、MTを運転するということは、頭を使った運転をするということでもあります。そしてMTを巧みに操るということは、クルマを自分の支配下に置くことでもありますが、逆説的に言うなら自分がクルマという機械の一部になり、深いレベルで一体化してくるということでもあります。つまり、頭脳を持ったクルマのできあがりなのです。プジョーでMTの楽しさを知れば、運転がもっともっと面白くなるはずです。

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松田秀士氏 Profile

早くから、自動車専門誌の新車インプレッション(試乗記)を執筆するなどモータージャーナリストとして各誌に執筆し、2000年より日本カーオブザイヤー選考委員を務めている。
現在54歳で、プロドライバーとしては現役日本人最高齢。(2009年7月現在)レベルを保つために食事やトレーニングを研究し、日々のちょっとした行いから健康と体力を維持するアンチエイジングならぬスローエイジングを提唱。いくつになってもクルマの運転は上達することを確信、そのためにはスローエイジングが近道であることなどを綴ったコラム『松田秀士の考えて走る』(レブスピード・三栄書房)を連載している。
また、CS放送やケーブルTVのGAORA(ガオラ)で放送されるインディカー・シリーズのレギュラー・コメンテーターも努める。

HIDESHI MATSUDA official website
http://www.matsuda-hideshi.com/

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掲載日:2009/7/21

※本ウェブサイトに掲載されている情報は、掲載時点における情報です。
掲載した時点以降に変更される場合もありますので、あらかじめご了承ください。

Le Style PEUGEOTバックナンバー一覧

  • Vol.6 上質な毎日を彩る 匠の技と遊び心あふれる革小物
  • Special パトリック。その靴作りにかける想い。
  • Vol.5 知性で操り感性で味わう、MTの楽しさ
  • Vol.4 プロたちの技が光る、プジョー車陸揚げの舞台裏
  • Vol.3 美味しいコーヒーを、究める
  • Vol.2 永遠の定番アイテム 白シャツの着こなしを愉しむ
  • Vol.1 "Petit France" 神楽坂